• 会社所在地/〒444-0867 愛知県岡崎市明大寺町西郷中39-6
  • 醸造所所在地/〒443-0105 愛知県蒲郡市西浦町南知柄20-1
  • 連絡先/Phone/Fax: 0564-54-7827

【事業概要と目的】

BEER 合資会社PROGRESSIVE PARTNERSHIPS(プログレッシブ・パートナーシップス)は、2013年10月に酒類製造免許を取得後、ブランド名「HYAPPA BREWS(ヒャッパブリュース)」として醸造を始めた。当社は発泡酒製造免許のため発泡酒のみの製造を行っているが、麦芽の使用量が少ない印象を受ける大手メーカーの発泡酒とは対照的に、当社は麦芽を100%使用したプレミアムな地ビールを製造している。さらに当社は、使用する原料に歴史的要素または地域性を取り入れる努力をしている。例えば「家康B(いえやすびー)」(右写真)は、苦みの強いキノコ類の「霊芝(れいし)」を使用している。この「霊芝」は漢方として現在も珍重されており、江戸時代においても岡崎が誇る人物「徳川家康」が健康のために愛用していたものでもある。同様に、「パープルグレイン37」(右写真)はむらさき麦のみでできている。むらさき麦とは、東海道37番目の宿場「藤川宿」のある岡崎市藤川町で復刻栽培されて いる大麦のことである。このように、当社は地域と密接に関わって商品開発することを使命と考え、また、岡崎を代表する商品となるような特徴的な商品開発を行っている。

【事業計画全体の概要、当該事業に取り組もうとする背景、目的】

NEWS PAPER 今回当社は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会などをはじめとするイベントに参加する国内外の観光客に向けて、日本の歴史上で比類のない魅力あふれた岡崎市を発信するため、岡崎の名産品である「八丁味噌」を商品開発に取り入れる。そして最終的には国際的に評価・価値の高い地ビールの製造・販売を目指している。「八丁味噌」は江戸時代より現在に受け継がれており、これらを使用することで伝統的かつ革新的な地ビールを作り上げることができる。使用する「八丁味噌」は岡崎市に位置する二つの八丁味噌製造業者のうちの一つ、合資会社八丁味噌(通称:カクキュー)のもので、協力関係を持って商品開発に取り組む。具体的には、「八丁味噌」独特の香りや風味を強調し、かつ国際的にも評価の高い商品を複数開発し、数種類のセット販売をすることを目指している。この目標を達成するために、二つのアプローチで開発を進めて行く。

1)八丁味噌の多様な特徴を強調した2~3種の異なるレシピを開発し、改良すること

ビールの風味において重要となるのは主に「麦芽の甘みと旨味」、「苦味」、「香り」であり、本アプローチ においては八丁味噌特有の風味を損なうことのない上記3つのポイントを選択し、開発する必要がある。 具体的には、最適な原料(麦芽・ホップ)の選択、そして醸造工程における醸造条件(糖化温度、発酵温度) の特定を計画している。

2)味噌の製造工程で自然発生する副産物(右写真)を利用すること

NEWS PAPER 八丁味噌は蒸した大豆に八丁味噌独自の麹菌(Aspergillus hatcho)を加え、塩と水を添加し、杉樽にて二夏二冬熟成させることで作られる。この八丁味噌特有の風味は、多くの微生物に由来するもので、麹菌の他に味噌蔵に付く微生物(未確認)に大きく起因している。実際に夏の間発酵している味噌には、様々な微生物を含むと考えられる白い斑点状のもの(右上写真)が発生する。我々はこの副産物から特定の「八丁菌」、特に酵母菌を分離することに焦点を当てている。なぜなら、八丁味噌に含まれる微生物(麹菌を除く)が今現在未確認・未分析なことに加え、ビール醸造において使用される酵母の中でも、味噌由来の酵母は過去に使用された実績がないからである。そのため当社はビール醸造に適合する「八丁菌」の分析及び分離を行い、その酵母が持つ能力に関する研究を重ね、必要な調整を行い、最終的にはビール醸造に限定しない商業利用を目的とした「八丁菌」を広めていきたいと考えている。また、当社はその分析・研究内容をデーターベース化するため、広範なフレーバー分析を事業後も継続して実施する。恐らく「八丁菌」そのものが特徴的なフレーバーを作り出すと考えられ、八丁味噌を使用したビール以外においても、汎用性の高い発酵素材になり得る可能性を秘めている。しかしまずは「八丁菌」を使用し、カクキューと連携して岡崎の歴史と伝統を伝える事の出来る革新的なビールを開発することである。

以上二つのアプローチから開発した「八丁味噌地ビール(仮称)」は、すでに当社が販売する岡崎に縁のある商品と関連性のあるパッケージの作成を行い、観光客を対象として販売する。

【同業他社等の類似事例の有無・既存製品との違い】

現在、金しゃちビールは、系列会社である盛田株式会社が製造する赤味噌を使用した「赤味噌ラガー」を生産している。典型的なラガースタイル(※1)に合わせて、「赤味噌ラガー」はドライで、僅かな味噌味がする。これとは対照的に当社の既存商品は全てエールスタイル(※2)であり、これらは多様なフレーバーが感じられ、複雑な風味を味わうことができる。そのため、エールスタイルに味噌を添加する事でより一層味噌の風味が強調されると考えている。金しゃちビールは恐らく、通常のビール醸造工程において赤味噌を添加使用するのに対し、当社は八丁味噌を添加使用するだけでなく、ビール酵母を一切使用せずに、今回分離する「八丁菌」のみにて発酵を行う。この「八丁菌」は発酵過程全てにおいて多様な香りや旨味などを作り出すと予想している。

また、赤味噌は愛知県の特産品として知名度が高く、実際に多くのメーカーが製造している(年間2万3千トン)。一方で八丁味噌は、非常に限られた量(年間27トン)を、昔ながらの伝統製法を用いて1337年から現在までの間、岡崎のみで製造されている。さらに、八丁味噌は天皇へ献上した歴史をも持つ。このように、「八丁味噌」と「八丁菌」を使用した当社の商品は、他の商品と比較し、よりプレミアムな価値を持つ。 

このような地域の素材を使用した商品やその考え方は、近年の地ビール市場(クラフトビール市場とも言う)において世界的に高く評価されるポイントである。実際、過去にビールの世界大会(World Beer Cup)においても、例えば日本の柚子を使用したビールが金賞を獲得している。よって、当社の八丁味噌地ビール(仮称)は国際的な注目及び評価を受ける可能性は極めて高いと言える。さらに、岡崎市は岡崎固有の「八丁菌」のみから作られる八丁味噌ビール(仮称)を生産する世界唯一の場所として、知名度が上がると予想される。例えばフランスの「シャンパン」やケンタッキーの「バーボン」のように、世界的に有名な地域ブランドとして日本の「八丁味噌ビール(仮称)」が誕生する可能性を大いに秘めている。
(※1) 下面発酵で製造するビール。一般的にドライで軽い飲み口が特徴。日本の大手メーカーが作るビールは全てこのスタイル。
(※2) 上面発酵で製造されるビール。一般的に香りが強く豊かな味わいが特徴。近年人気を見せている地ビール(クラフトビール)の多くがこのスタイル。

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【八丁味噌を選定した理由】

八丁味噌は以下の理由により選定している。

  • 1)長い伝統 — 1337年より現在まで岡崎にて製造されているという伝統的かつ歴史的な部分が、当社の歴史的観点から開発した既存ブランド(家康Bとパープルグレイン37)のイメージと合致する。
  • 2)地元製品 — 同市内にあることで、企業間の連携が取りやすい点とお互いの市場(食品市場)が同じである。
  • 3)特徴的なフレーバー — 今までにない新しい商品を生み出すことができる。
  • 4)八丁味噌固有の微生物 — 八丁味噌の風味を特徴づけるものは、岡崎にある味噌製造会社のみにて発見された菌に起因するということが研究によってわかってきた。この点は他の場所で類似商品を開発することができないということを意味している。 
  • 5)イノベーション — 味噌由来の酵母を使用してのビール醸造は、国内外において過去に一度も成されていない。
  • 6)マーケット拡大・イノベーション — 八丁味噌の生産は非常に限られており、それらをビール製造に大量に使用する事が出来ない状況が予想される。そこで、本事業にて分離した「八丁菌」に、実際の八丁味噌を加えることなく、特有な味噌風味を付与する能力があるとしたら、本事業のみならず八丁味噌の伝統を広げる新たな市場を切り開くことを意味する。
  • 7)プレミアムな価値あるブランド — 本物の八丁味噌は岡崎でのみ生産されている。また工場や製法は国の登録文化財として認定され、さらに八丁味噌は宮内庁御用達であることからも、他の素材よりもプレミアムなブランドである。

【技術の活用方法】

当社の既存商品(霊芝を使った家康B)からも、当社は一般的にビールに使用されない原料を扱い、他社とは一線を画した商品開発に強みを持っている。また、生物学に精通した担当者による科学的なアプローチ方法や、知識を駆使し、本事業を実現する。

なお、当社が保有する技術やノウハウで対応できない部分については、あいち産業科学技術総合センター食品工業センターに協力をお願いする。

【ターゲット市場の選定と選定理由】

当社は本事業におけるターゲット市場を観光産業と海外市場を主に選定している。その理由は、本事業の目的でもある「歴史上魅力にあふれた岡崎市の発信」のためである。そのために本事業では海外の展示会に参加することや、商品が完成した際には国内外のビールコンペティションに出品し販売促進やPRを行う事を計画している。

【市場の規模、動向、将来性、販売方法、今後の営業方針について】

・市場の規模、動向、将来性

国内外の地ビール市場(クラフトビール市場とも言う)はこの数年間、2桁の成長を記録している。日本国内においても、地ビールに関連した新しい事業、例えば醸造所やビアパブなどが毎週開業している。また、地ビールは今や“ニッチ産業”ではなく、現在多くの地ビール商品が大手百貨店、コンビニエンスストアやレストランチェーンなどで販売されている。加えて日本国内の大手ビールメーカー全てが、近年同市場をターゲットにした商品をリリースしている。当社自身もここ一年余りで商品販売数が増加しており、現在、規模をさらに拡大した新たな醸造所を建設する計画段階にある。現在当社における動向としては、売上高の多くが愛知県内である一方で、大阪や東京をはじめとする日本全国に対する商品の出荷を開始しており、その出荷先は20ヶ所に及んでいる。このような需要の増加によっても証明されているように、国内での当社ブランドの知名度や評価は、着実に上昇してきている。

・販売方法、今後の営業方針

本事業で開発する「八丁味噌地ビール(仮称)」は複数種に及び、八丁味噌シリーズとして販売する予定である。本事業において作成予定のHPを本事業終了後も活用し、ネットショップの開設を計画している。また、インターネットを活用した幅広い販売網だけでなく、特に地元に重きを置いた当社既存の販売経路で商品を広めていく。観光産業については、お土産として販売することを考えており、岡崎城、道の駅及び他の岡崎の観光地で八丁味噌地ビール(仮称)を販売していく。最後に最も重要と捉えている点が、地元企業同士で連携・協力することで、例えばカクキューの小売店や流通ネットワークにアクセスできることにより、今まで以上に広範囲に販売できることである。<仕入れ先について>

当社は、本事業に使用する八丁味噌をカクキューより購入する。また、本事業の要でもある八丁味噌の副産物を、カクキューが無償で提供することや、その成分や微生物の分布について分析することについて既に合意している。

【地域産業、業界の現状】

全国における味噌の製造量は年々少しずつではあるが下降傾向にある(全国味噌工業共同組合連合会の会員報告数値集計より)。そのような中、八丁味噌は大きな変化もなく安定した生産状況である。この点からもわかるように、時代の変化に流されず、継続して八丁味噌の製造量を維持できている大きな強みとして、伝統的かつ歴史的な産業であることが考えられる。そういった伝統や歴史文化を、さらに広く世界に伝える為にも、当社は本事業を成功させる必要がある。

【地域産業への貢献、波及効果】

味噌が日本由来の伝統発酵調味料であることを活かした八丁味噌地ビール(仮称)は、様々なビールコンペティションやイベントを通じて、国際舞台に対し、日本の新しいビールスタイルとしてアピールでき、またその地位を確立する可能性を持っている。実際にWorld Beer Cupをはじめとする国際大会にて賞を獲得した日本の醸造所は、その後知名度、販売量共に国内外において大きく拡大したという結果が出ている。加えて、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会や伊勢志摩サミットなど、当社の伝統的かつ歴史的な意味を持った商品を、国際舞台に対してアピールできる絶好の機会が今後複数存在する。特に、当社の代表であるクレッグ・モーリーは在日米国商工会議所中部支部に大きく関わっているアメリカ人であり、日本で開催される国際的イベントにおいて、多くの注目を得る可能性がある。


以上のことから、八丁味噌という特別な地域資源を使用する事で、日本国内の多くの人の注目を浴び、知名度の上昇を含めた恩恵を直接得る事ができる。また、八丁味噌地ビール(仮称)は世界的にみても珍しいビールであり、海外のビール愛好家たちの興味を集め、自然と八丁味噌が世界各地へと広まって行くと予想される。よって当社の「地域の歴史と伝統を大切にする商品開発」という考え方は、地域産業だけでなく国内外両方において利益をもたらすと考えている。